鞠二月二日堂

詩と芸術のブログ

ディキンソン 「憑かれるのは――部屋でなくてよい――」 One need not be a Chamber — to be Haunted —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第12回「憑かれるれるのは――部屋でなくてよい――」 One need not be a Chamber — to be Haunted — (670番 1862年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻…

地下道をゆくのがよい

買い物に出かけた。まだ午後三時だというのに薄暗い。湿っぽい曇り空を見上げた(雨、大丈夫かな?)。線路のあちら側にゆこう、でも踏切は好きじゃない(迂闊に立ち入ったらヨクナイコトが起きるよ)。 地下道をゆくのがよい(いつもそうしています)。階段…

ディキンソン 「太陽の意匠は」 The pattern of the sun

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第11回「太陽の意匠は」 The pattern of the sun (1550番)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンスン詩集』新倉俊一訳・編(思潮…

ディキンソン 「「希望」は羽をまとった姿で――」 "Hope" is the thing with feathers —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第10回「「希望」は羽毛をまとった姿で――」 "Hope" is the thing with feathers — (254番 1861年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ …

ディキンソン 「大切な宝物を手にして――」 I held a Jewel in my fingers —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第9回「大切な宝物を手にして――」 I held a Jewel in my fingers — (245番 1861年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ ]は、わたしの…

ディキンソン 「お別れはしないでおきましょう」 We'll pass without the parting

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第8回「お別れはしないでおきましょう」 We'll pass without the parting (996番 1865年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンス…

夕暮れの森だった

夕暮れの森だった。不運はどこにでも舞い降りるものらしい。茜色の空から突如飛来したドッジボールに当たって女は倒れた。額から血が流れて意識を失った。担架で運ばれてゆく女に付き添ったのは妹だった。この世界が神さまの夢なら、姉の口癖をまねて語りか…

未来の蟻たち

街路樹の幹に一匹の蟻を見つけた。蟻たちは時空を巡り〈小さなものたち〉を集めてまわる。あの日のぼくの夢―情熱も、こんなふうに蟻たちに運ばれていったのだろうか? 1万6000年後の未来の蟻たちがきみたちに語りかける。 〈時がすぎてゆくというのは世界が…

ディキンソン 「詩人はランプに火を点すだけ――」 The Poets light but Lamps —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第7回「詩人はランプに火を灯すだけ――」 The Poets light but Lamps — (883番 1864年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート 5.亀井俊介の解説…

ディキンソン 「わたしが死へと立ち止まれなかったので――」 Because I could not stop for Death —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第6回「わたしが死へと立ち止まれなかったので――」 Because I could not stop for Death — (712番 1863年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノー…

学校奇譚

わたしの通うM高校の保健室は日々成長しているらしかった。単純にベッドの数が増えているということではなくて、原生動物が養分を捕食するように隣室を浸食しながら室内の構成要素を有機的に変化させているようなのだ。静寂に満たされた空間とは対照的なめ…

辺境の街

コンクリートで舗装された細い坂道を上がってゆく。粗末な民家の軒下に髪を緑に染めた女が立っていた。なにかに憑かれたように前方を凝視している。あまりに透明な眼差しは見えるものすべてを素通りしてしまう。石段の横では髪を紫に染めた青年が鳶色の毛布…

ディキンソン 「百年の後には」 After a hundred years

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第5回「百年の後には」 After a hundred years (1147番 1869年頃)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンスン詩集』新倉俊一訳・編…

世界平和会議

昨夜まで降りつづいた雨は上がり、路地にはいくつもの水たまりが出来ていた。R旅館の前で、わたしたちは先生を待っていた。 「Yさん、先生来ますかね? 夢のお告げなんでしょ」 「お告げなんでしょうか? わたし、よく分からないんです」 「先生が、ここで…

楽しいことが好きだった

楽しいことが好きだった いつの頃からか楽しくなくなった夜明け前に目覚めた 窓辺の植物がいつもとは違って見えたここに来てから自分であって自分ではないような感覚がある部屋の主は長期の不在 わたしはそのひとの身代わりなんだ明るくなったら植物の世話を…

神さまの夢

縁日の帰りだった。Aは綿飴を食べていた。奇妙な既視感があった。Aがこれから語ることを、ぼくはありありと思い出していた。 ぼくたちが神さまの見ている夢の登場人物だとしたら? ぼくたちに神さまとの不思議な出会いがあるのは、ぼくたちが神さまの夢の…

ディキンソン 「言葉は死んだ」 A word is dead

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第4回「言葉は死んだ」 A word is dead (1212番 1872年頃)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『対訳 ディキンソン詩集』亀井俊介編(岩波…

エミリー・ディキンソン 詩と時代~年譜

エミリー・ディキンソン Emily Dickinson (1830-1886) アメリカ合衆国の詩人。生前に発表(印刷)された詩は匿名での10篇だけだったそうです。彼女の死後、その詩はおおくのひとに支持されてゆき、いまではホイットマンとならんでアメリカを代表する詩人の…

旅の記憶

旅の途中で友人が怪我をした。旅をつづけることが出来なくなった。海の近くに小さなアパートを借りて二人で暮らしはじめた。夜になると食卓に蝋燭を灯して、水平線から昇る月を眺めながら食事を楽しんだ。元気になったら、また旅をしよう。 「きみには聞こえ…

ポー 「ユーラルーム 」 Ulalume 《2》 翻訳ノート

エドガー・アラン・ポー「ユーラルーム」《1》 日本語訳 解説 からの つづき(ポーの目次はこちら)。 「ユーラルーム」は語りのトーン(詩に相応しい語りの調子)をつかむのに思いのほか時間がかかった。当初、ポーの他の詩と同じ感覚で訳していたのだけど…

毛糸の帽子

みんなが毛糸の帽子を持っていた。わたしだけが、まだ持っていなかった。先日、やはり毛糸の帽子がほしくなって近所のスーパーマーケットに買いに出かけた。いろいろ迷って、チョコレート色の地に白いステッチの幾何学模様が入ったものを選んだ。 翌朝、毛糸…

ポー 「ユーラルーム 」 Ulalume 《1》 日本語訳 解説

海外の詩の翻訳シリーズ。 エドガー・アラン・ポー、第7回「ユーラルーム」 Ulalume (1847)日本語訳と解説(ポーの目次はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 ※ ポーの詩のエッセンスが日本語の詩として上手く伝わるように表現を工夫しながら、自由なイメ…

ディキンソン 「鳥たちの夏よりさらに晩く」 Further in Summer than the Birds

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第3回「鳥たちの夏よりさらに晩く」(鳥たちよりもさらに夏おそく) Further in Summer than the Birds (1068番 1866年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解…

不思議だと思いませんか?

不思議だと思いませんか?世界はわたしたちにむかってなにも説明しません世界がわたしたちに理解されないと嘆くこともありません世界はなにかを問いかけることがなく なにかを探すこともしませんそれなのに (それなのに……)わたしたちはいつだって理由を探…

T.S.エリオット 「荒地」 チェスのゲーム A Game of Chess 《1》 日本語訳 解説

海外の詩の翻訳シリーズ。 T.S.エリオット『荒地』 The Waste Land (1922)から「チェスのゲーム」 A Game of Chess 日本語訳と解説(『荒地』日本語訳だけをまとめて読みたい方はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 ※ [ ]は、わたしの補足です。「 」…

先生

午後四時十五分、作家のO先生と都心から特急列車〈てまり〉に乗った。Y駅で降車。はじめて訪れる街だった。先生は何度か訪れたことがあるらしかった。長く伸びてゆく影を追いかけるようにポプラの並木道を歩いた。 大きな噴水のある公園のベンチに先生と並…

蛇遣い

ひとつの研究が終わると、どうにも落ち着けない。休暇もそこそこに、あらたな研究課題を模索した。それまでのノートを読み返して選んだのは「蛇遣い」だった。 作家Mは廃校になった中学校の講堂を書斎として使っていた。十万冊の蔵書と三万枚のレコードがひ…

情景

白いリンネルのシャツを着て きみは直立した姿勢のまま夢を見た真昼の青空に休むことなく回りつづけていたのは巨大な風車だった地中深くから汲みあげられた水が乾いた大地の球根を育てた 遠い街だった 骸骨たちの乗り合いバスが次の交差点を曲がるとき水たま…

T.S.エリオット 詩と人生~年譜

T.S.エリオット Thomas Stearns Eliot (1888-1965) イギリス(生まれはアメリカ合衆国)の詩人、劇作家、評論家。1922年に発表された代表作『荒地』は、後の文学界に大きな影響を与えた。 詩 目次 エリオットの詩の日本語訳(原詩、解説、翻訳ノート付き)…

T.S.エリオット 「ゲロンチョン」 Gerontion 《1》 日本語訳 解説

海外の詩の翻訳シリーズ。 T.S.エリオット「ゲロンチョン(小さな老人)」 Gerontion (1920)日本語訳と解説(エリオットの詩の目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 ※ 原詩の行の配列をほぼ維持して訳しています。内容の把握がむつかしいとこ…

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