鞠二月二日堂

詩と芸術のブログ

未来の千の蟻たち

夜の広場の街灯の許に落ちた〈情熱の名残〉たち未来の千の蟻たちに見つけられて運ばれていったきみたち その場所を知っていますか? 集められて夢の迷路に積まれた〈情熱の名残〉たち未来の千の蟻たちが輪になって歌いはじめるさざ波のシンフォニー 共鳴して…

向上高等学校吹奏楽部 清水大輔作曲 「希望」は羽をまとった姿で…

先日、ツイッターを見ていたところ、わたしが訳したディキンソンの詩「「希望」は羽をまとった姿で――」と同じタイトルの楽曲を見つけました。向上高等学校吹奏楽部の委嘱で清水大輔氏が作曲されたもののようです。 第50回チャリティーコンサートが1週間後に…

ディキンソン 「わたしは荒野を見たことがない――」 I never saw a Moor —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第19回「わたしは荒野を見たことがない――」 I never saw a Moor —(1052番 1865年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ ]は、わたしの補…

ディキンソン 「わたしの人生は――弾の込められた銃で――」 My Life had stood — a Loaded Gun —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第18回「わたしの人生は――弾の込められた銃で――」 My Life had stood — a Loaded Gun —(754番 1863年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ …

ディキンソン 「わたしの火山に草が育つ」 On my volcano grows the Grass

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第17回「わたしの火山に草が育つ」 On my volcano grows the Grass(1677番)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンスン詩集』新倉…

ディキンソン 「真実をすべて告げよ でもそれを斜めから告げよ――」 Tell all the Truth but tell it slant —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第16回「真実をすべて告げよ でもそれを斜めから告げよ――」 Tell all the Truth but tell it slant —(1129番 1868年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4…

ディキンソン 「あなたが秋に訪れるのなら」 If you were coming in the Fall,

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第15回「あなたが秋に訪れるのなら」 If you were coming in the Fall, (511番 1862年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ ]は、わた…

小さな区画だった

小さな区画だった探偵のように秘密を探ろう 忘れていたものたくさん午後の光が雲間から漏れて 校舎の壁を明るくするとそこにぼくたちふたりの影があった やがて離れ離れになってゆくはじめから無かったものを在ったと思い それを奪われたと感じる芸術家たち…

ディキンソン 「これが詩人というひと――それは」 This was a Poet — It is That

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第14回「これが詩人というひと――それは」 This was a Poet — It is That (448番 1862年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ ]は、わた…

ディキンソン 「水は渇きに教わる」 Water, is taught by thirst.

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第13回「水は渇きに教わる」 Water, is taught by thirst. (135番 1859年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ ]は、わたしの補足です…

夢の終わりに虹の橋を渡ってみる

夢の終わりに虹の橋を渡ってみる。ぼくたちの孤独にも互いに分かちあえるものがあるはずなんだ。皆で集まり輪になった。 祖父の家のふるいテレビは革命前夜の広場を映していました。五歳のわたしはガス燈に照らされた群衆のなかに〈わたし〉がいることをちゃ…

T.S.エリオット 「荒地」 チェスのゲーム A Game of Chess 《2》 翻訳ノート 1

T.S.エリオット『荒地』 チェスのゲーム A Game of Chess 《1》 日本語訳 解説 からのつづき(『荒地』日本語訳だけをまとめて読みたい方はこちら)。 翻訳ノート 「チェスのゲーム」の3つのパート(A:77~110行目、B:111~138行目、C:139~172行目)…

ディキンソン 「憑かれるのは――部屋でなくてよい――」 One need not be a Chamber — to be Haunted —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第12回「憑かれるれるのは――部屋でなくてよい――」 One need not be a Chamber — to be Haunted — (670番 1862年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻…

地下道をゆくのがよい

買い物に出かけた。まだ午後三時だというのに薄暗い。湿っぽい曇り空を見上げた(雨、大丈夫かな?)。線路のあちら側にゆこう、でも踏切は好きじゃない(迂闊に立ち入ったらヨクナイコトが起きるよ)。 地下道をゆくのがよい(いつもそうしています)。階段…

ディキンソン 「太陽の意匠は」 The pattern of the sun

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第11回「太陽の意匠は」 The pattern of the sun (1550番)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンスン詩集』新倉俊一訳・編(思潮…

ディキンソン 「「希望」は羽をまとった姿で――」 "Hope" is the thing with feathers —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第10回「「希望」は羽をまとった姿で――」 "Hope" is the thing with feathers — (254番 1861年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ ]…

ディキンソン 「大切な宝物を手にして――」 I held a Jewel in my fingers —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第9回「大切な宝物を手にして――」 I held a Jewel in my fingers — (245番 1861年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ [ ]は、わたしの…

ディキンソン 「お別れはしないでおきましょう」 We'll pass without the parting

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第8回「お別れはしないでおきましょう」 We'll pass without the parting (996番 1865年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンス…

夕暮れの森だった

夕暮れの森だった。不運はどこにでも舞い降りるものらしい。茜色の空から突如飛来したドッジボールに当たって女は倒れた。額から血が流れて意識を失った。担架で運ばれてゆく女に付き添ったのは妹だった。この世界が神さまの夢なら、姉の口癖をまねて語りか…

未来の千の蟻たち

街路樹の幹に一匹の蟻を見つけた。蟻たちは時空を巡り〈小さなものたち〉を集めてまわる。あの日のぼくの夢―情熱も、こんなふうに蟻たちに運ばれていったのだろうか? 1万6000年後の未来の千の蟻たちがきみたちに語りかける。 〈時がすぎてゆくというのは世…

ディキンソン 「詩人はランプに火を点すだけ――」 The Poets light but Lamps —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第7回「詩人はランプに火を灯すだけ――」 The Poets light but Lamps — (883番 1864年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート 5.亀井俊介の解説…

ディキンソン 「わたしが死へと立ち止まれなかったので――」 Because I could not stop for Death —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第6回「わたしが死へと立ち止まれなかったので――」 Because I could not stop for Death — (712番 1863年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノー…

学校奇譚

わたしの通うM高校の保健室は日々成長しているらしかった。単純にベッドの数が増えているということではなくて、原生動物が養分を捕食するように隣室を浸食しながら室内の構成要素を有機的に変化させているようなのだ。静寂に満たされた空間とは対照的なめ…

辺境の街

コンクリートで舗装された細い坂道を上がってゆく。粗末な民家の軒下に髪を緑に染めた女が立っていた。なにかに憑かれたように前方を凝視している。あまりに透明な眼差しは見えるものすべてを素通りしてしまう。石段の横では髪を紫に染めた青年が鳶色の毛布…

ディキンソン 「百年の後には」 After a hundred years

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第5回「百年の後には」 After a hundred years (1147番 1869年頃)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンスン詩集』新倉俊一訳・編…

世界平和会議

昨夜まで降りつづいた雨は上がり、路地にはいくつもの水たまりが出来ていた。R旅館の前で、わたしたちは先生を待っていた。 「Yさん、先生来ますかね? 夢のお告げなんでしょ」 「お告げなんでしょうか? わたし、よく分からないんです」 「先生が、ここで…

楽しいことが好きだった

楽しいことが好きだった いつの頃からか楽しくなくなった夜明け前に目覚めた 窓辺の植物がいつもとは違って見えたここに来てから自分であって自分ではないような感覚がある部屋の主は長期の不在 わたしはそのひとの身代わりなんだ明るくなったら植物の世話を…

神さまの夢

縁日の帰りだった。Aは綿飴を食べていた。奇妙な既視感があった。Aがこれから語ることを、ぼくはありありと思い出していた。 ぼくたちが神さまの見ている夢の登場人物だとしたら? ぼくたちに神さまとの不思議な出会いがあるのは、ぼくたちが神さまの夢の…

ディキンソン 「言葉は死んだ」 A word is dead

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第4回「言葉は死んだ」 A word is dead (1212番 1872年頃)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『対訳 ディキンソン詩集』亀井俊介編(岩波…

エミリー・ディキンソン 詩と時代~年譜

エミリー・ディキンソン Emily Dickinson (1830-1886) アメリカ合衆国の詩人。生前に発表(印刷)された詩は匿名での10篇だけだったそうです。彼女の死後、その詩はおおくのひとに支持されてゆき、いまではホイットマンとならんでアメリカを代表する詩人の…

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