死の国
古風な旅館の渡り廊下から 冬の川の眺めを楽しんだ
空想的なものは すり減ることがないという 素敵だね
ただときおり姿を隠してしまう どこにいったのかなあ?
折り紙の匂いがした 鈴の音 壁の漆喰は淡い緑色だった
眼差しは限りなくゼロに近い薄さだった 誰の死だろう?
朝霧の野道だった どこまでも歩いてゆこう 奇妙だな?
空にむかって両手を差し出した 大気は稠密な虚空だった
ひそひそ話を聞いた 漂う水の微粒子に踊る幻影たち
ああ わたしはどこにも生きてはいなかった
詩作メモ
死とはなんだろう? (さあ、なんだろうね、ご存知?)
訊ねられなければ、ひとは〈死〉を知っているだろう。そのひとのなかに隠されて〈死〉は夢を見つづけているだろう。
ご案内
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