胸を小さな蛇に噛まれた
胸を小さな蛇に噛まれた 救急病院に搬送された
夜のむこうに ひとかたまりの黒い森が見えた
そのまま息が止まってしまいそうな誘惑に こころが怯えた
夢のなかで懸命に活字を拾った 本を復元したかった
ランプを手許に引きよせる このページを仕上げてしまおう
指先に愛を込めた 反転した金属の文字に秩序をあたえる
インクを調合する 紙の裁断 試し刷り どうかな?
よし 綺麗に刷れたぞ 本よ 蘇れ!
詩作メモ
夢で見たイメージからつくった詩。〈蛇〉は苦手な生き物だけれど、夢に出てきた〈蛇〉は不気味なものではなく、怖くもなかった。〈黒い森〉には、死そのものが寄り集まり凝固したような不気味さと美しさがあった。
夢のなかの〈本の復元〉は達成されたのだろうか? その結末をわたしは知らない(目覚めたとき、おだやかな気分だった…)。
ご案内
- 次回 自転車とチョコレート
- 前回 揺籠と残酷
- 詩 目次
関連の詩
- 蛇遣い [蛇]