揺籠と残酷
シアンクレールで一杯のコーヒーを飲む
ぼくたちは木炭の素描のような街に暮らしていた
ぼくは心臓[heart]の色を探すように生きた
不意の出来事だった 青い煉瓦の壁が歩道に現れた
そして 突然 崩壊する (戸惑いは悲しみに似ている)
ぼくには踏み越えてゆくことは出来なかった
砕けた〈青〉の残骸は揺籠に似ている
詩作メモ
「シアンクレール」は高野悦子『二十歳の原点』に出てくる京都のジャズ喫茶。『二十歳の原点』の記述(日記)は 1969年1月2日にはじまり、1969年6月22日に終わる。「国家権力」「ブルジョア」「マルクス」「全共闘」「バリケード」「シュプレヒコール」時代を象徴する言葉たち。「ぼく」(作中人物)はずっと遠く、21世紀に生きている。
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