鞠二月二日堂

詩と芸術のブログ

2016-01-01から1年間の記事一覧

ディキンソン 「詩人はランプに火を点すだけ――」 The Poets light but Lamps —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第7回「詩人はランプに火を灯すだけ――」 The Poets light but Lamps — (883番 1864年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート 5.亀井俊介の解説…

ディキンソン 「わたしが死へと立ち止まれなかったので――」 Because I could not stop for Death —

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第6回「わたしが死へと立ち止まれなかったので――」 Because I could not stop for Death — (712番 1863年)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノー…

学校奇譚

わたしの通うM高校の保健室は日々成長しているらしかった。単純にベッドの数が増えているということではなくて、原生動物が養分を捕食するように隣室を浸食しながら室内の構成要素を有機的に変化させているようなのだ。静寂に満たされた空間とは対照的なめ…

辺境の街

コンクリートで舗装された細い坂道を上がってゆく。粗末な民家の軒下に髪を緑に染めた女が立っていた。なにかに憑かれたように前方を凝視している。あまりに透明な眼差しは見えるものすべてを素通りしてしまう。石段の横では髪を紫に染めた青年が鳶色の毛布…

ディキンソン 「百年の後には」 After a hundred years

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第5回「百年の後には」 After a hundred years (1147番 1869年頃)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『ディキンスン詩集』新倉俊一訳・編…

世界平和会議

昨夜まで降りつづいた雨は上がり、路地にはいくつもの水たまりが出来ていた。R旅館の前で、わたしたちは先生を待っていた。 「Yさん、先生来ますかね? 夢のお告げなんでしょ」 「お告げなんでしょうか? わたし、よく分からないんです」 「先生が、ここで…

楽しいことが好きだった

楽しいことが好きだった いつの頃からか楽しくなくなった夜明け前に目覚めた 窓辺の植物がいつもとは違って見えたここに来てから自分であって自分ではないような感覚がある部屋の主は長期の不在 わたしはそのひとの身代わりなんだ明るくなったら植物の世話を…

神さまの夢

縁日の帰りだった。Aは綿飴を食べていた。奇妙な既視感があった。Aがこれから語ることを、ぼくはありありと思い出していた。 ぼくたちが神さまの見ている夢の登場人物だとしたら? ぼくたちに神さまとの不思議な出会いがあるのは、ぼくたちが神さまの夢の…

ディキンソン 「言葉は死んだ」 A word is dead

海外の詩の翻訳シリーズ。 エミリー・ディキンソン、第4回「言葉は死んだ」 A word is dead (1212番 1872年頃)日本語訳と解説(ディキンソンの目次と年譜はこちら)。 1.日本語訳 2.原詩 3.解説 4.翻訳ノート ※ 『対訳 ディキンソン詩集』亀井俊介編(岩波…

エミリー・ディキンソン 詩と時代~年譜

エミリー・ディキンソン Emily Dickinson (1830-1886) アメリカ合衆国の詩人。生前に発表(印刷)された詩は匿名での10篇だけだったそうです。彼女の死後、その詩はおおくのひとに支持されてゆき、いまではホイットマンとならんでアメリカを代表する詩人の…

旅の記憶

旅の途中で友人が怪我をした。旅をつづけることが出来なくなった。海の近くに小さなアパートを借りて二人で暮らしはじめた。夜になると食卓に蝋燭を灯して、水平線から昇る月を眺めながら食事を楽しんだ。元気になったら、また旅をしよう。 「きみには聞こえ…

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