未来の千の蟻たち
街路樹の幹に一匹の蟻を見つけた。蟻たちは時空を巡り〈小さなものたち〉を集めてまわる。あの日のぼくの夢―情熱も、こんなふうに蟻たちに運ばれていったのだろうか?
1万6000年後の未来の千の蟻たちがきみたちに語りかける。
〈時がすぎてゆくというのは世界がほどけてゆくことです。それでも生命は結び目をつくろうとします〉
沃野に雨が降り、茂みの奥で小鳥たちが羽を休めるとき、未来の千の蟻たちの収蔵庫―ライブラリーの片隅で夢―情熱が再生産される。虹の記憶が生命のリボンを結ぶ。
詩作メモ
200文字あまりの詩を仕上げるのに、ずいぶんと遠回りをしてしまった。理屈ぼく考えてみたり、抒情に流されたり…… 詩がまとまりを見せはじめたのは、ここに登場する蟻たちが時間(過去~現在~未来)を自由に行き来できる存在だということに思い至ったときだった(小さな発見だった)。喪失は再会のためではなくて、新しい生命のためにあるのだと未来の千の蟻たちに教えてもらった。
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