とある家の水槽のこと
案内された部屋は薄暗かった 大きな水槽が置いてある
モールのような水草が優雅にゆれていた ゆらりゆらり
透明なパイプからは小さな泡が出ている ぷくぷくぷく
こころがなごみますね きよらかな水っていいな
ぼんやり見つめていたら…… あれ?
水槽の水がみるみる減っていった あっと言う間に空になった
こんなことってあるのかな? 水はどこいった 水漏れ?
どうしたらいい? おろおろしていると奥から家人が現れた
背の高い貴婦人だった 空の水槽にあわてた様子はない
じっと待った 水槽の底から ゆるゆると水が湧き出てきた
水の記憶は誰のものでもないから 水は入れ替わりますよ
水槽は自動で水を入れ替える仕掛けになっていた
詩作メモ
夢に出てきた「水槽のお話」から書き起こした詩。心理学の視点では、水(そのイメージ)は意識下の領域と深いつながりがあるという(無意識の象徴として夢や昔話に〈水〉が登場する)。
入れ替わる水~循環する無意識
水槽の入れ替わる水のイメージを面白いと思った。これをユングの意識、個人的無意識(personal nuconscious)、集合的無意識(collective nuconscious)の関係にあてはめて図にしてみよう。
眠っているあいだに、わたしたちのなかの水=無意識が、引き潮、満ち潮のように入れ替わってゆく。無意識の領域のことだから明確な意識としての実感はないけれど、朝、目が覚めたら、昨日までとはなにかが違っているような気がした…… 循環する水を素敵に思う。
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